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「信号もコンビニもない村」だからできる!五木村の大自然と工夫
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阿部 早加さん
五木村地域おこし協力隊
熊本への移住者の暮らしのリアルに迫る「熊本暮らしのリアルとホンネ」。今回は、「信号もコンビニもない村」五木村へ移住し、悠々自適な生活を楽しんでいる阿部さんにお話を伺いました。
五木村:熊本県南部の山岳地帯に位置する村。村の中央には水質日本一の川辺川が流れており、四季折々の自然に包まれています。2022年6月末現在で、499世帯1,013人が暮らしています。
「信号もコンビニもない」五木村だからこその生活
2021年5月末に五木村に引っ越してきました。その前は福岡県に住んで飲食店で働いていました。コロナ禍でも給料はいただいていましたが、しばらくは仕事自体がないという状態で過ごしていました。その仕事も長く続けていたので、そろそろ変化が欲しいなと思っていたところに、五木村の地域おこし協力隊の求人を見つけました。
他県の地域おこし協力隊の求人も見たのですが、「熊本県なら福岡との行き来もしやすいし便利かも」と思い、すぐに五木村へ書類を送りました。程なくして、五木村で面接を受けることになりました。車の運転に自信がなかったので、公共交通機関を使って五木村へ行こうと調べたら、なんと6時間もかかることが判明。しかたなく慣れない運転で五木村へ。道中、「この先に本当に人が住んでいるのか」と不安になりながらなんとか到着しました。
その後、地域おこし協力隊として採用され、五木村へ移住しました。
五木村に移住して、何もなくなったと言っても過言ではないくらい、生活が一変しました。
福岡に住んでいた時は、朝コンビニに寄ってから仕事に向かい、仕事が終わったら友達とカフェに行ってお茶をしたり、話題のお店にご飯を食べに行ったりという生活をしていました。
それが五木村では、買い物をする場所もないし、今まで通っていたようなお店や美容室もない。最寄りのスーパーやドラッグストアには車で30〜40分かかります。
最初は戸惑いもしましたが、五木村ではいろんな人が助けてくれますし、五木村ならではの生活があります。ご近所さんがごはんやおかずをお裾分けしてくれますし、綺麗な川がすぐ近くにあるから、川辺でコーヒーを淹れてアウトドアでカフェ気分を愉しむ事もあります。
五木村の方はみなさん器用で、料理上手な方も多く、あるものを工夫して生活する知恵を持っています。道具を手作りしたり、お風呂を薪で沸かす家も少なくありません。
しかし、それを全然苦と思っていらっしゃらなくて、当たり前に生活しているのがすごいと思うんです。なんでも欲しい物が欲しい時に手に入り、ボタンを押せばお風呂が勝手に沸くという生活を無意識に当たり前と思っていたんだなと自覚しました。ない物を手作りしたり、工夫や助け合いで補う五木村でのライフスタイルには無駄がないなと思いました。
五木村には、私が憧れる物知りで強くてかっこいいおじいちゃんやおばあちゃんがいっぱいいます。
居心地が良い地域の方との距離感
一見不便そうに感じられるかもしれませんが、毎日が楽しいんですよね。仕事が終わって家に帰ってきて「ごはんを作ろうかな」と思っていると、玄関をトントンとノックする音が聞こえて、出てみるとお隣さんが「今日ハンバーグ作ったから、よかったら食べてね」と言って、焼き立てのものを持ってきてくれることもあります。
他にも釣ったばかりの鮎などをお裾分けしてもらうこともあって、すごく居心地がいいんです。人によっては距離感が近すぎて違和感や窮屈さを感じる人もいるかと思うのですが、私にとっては本当に丁度いい距離感だと思っています。
元々自然が好きで、時々散歩をしたり、低山にハイキングに出かけたりなどはありましたが、趣味と言う程ではありませんでした。
しかし、五木村に来ることが決まり、水のきれいな場所に住むのだから、渓流釣りを始めてみよう!と決めていました。とはいえ、流れも速く危険だし、初心者なので何をどうしたらいいのかも全然わからない状態でした。
そんな中、「渓流釣りをやってみたい」と色々な方に話していたら、なんと移住して1か月程で叶いました。
私がやっているフライフィッシングは道具もいろいろ必要で、お金のかかる趣味なんですが、たまたま声をかけたフライフィッシングのグループのおじさんたちが「フライフィッシングをしたいなら俺たちが道具を貸して教えてあげるよ」とおっしゃって、装備から竿まで揃えてくださって、毎週のように教えてくれるんです。
最近は私が「フライフィッシングはおもしろいから!」と周りの人を巻き込んで、移住して来た他の人たちも誘って一緒に釣りに行ったりもしています。
村の人で支えあう暮らしがある
地域おこし協力隊の仕事は移住・定住に関することで、空き家バンクの登録の推進や移住イベントへの出展、移住してきた方に会ってお話を聞くなどしています。移住して来られて何かに困っていたり、不安を感じていたりする方もいるので、そういう方のフォローをしたり、移住者交流会を開催しています。
移住者交流会は、移住して5年以内の方に声をかけて実施しています。今後移住して来ようという目的でお試し住宅に住んでいる方にも声をかけて、早い段階でコミュニティ作りができるようにしています。
村内には年配の方が多いので、移住してきても、私自身も同年代の友達はなかなかできなかったですし、別に不便を感じてないけれども、少し不安だったり、普段遊び相手が少なかったりということもあると思います。そういう移住者の不安を少しでも解消したり、フォローしていきたいなと思っています。
私も、移住してきた当初は不安でいっぱいでした。村の人口も少ないし、よそ者扱いされるのではないかなと不安だったんですが、全くそんなことはありませんでした。私の受け入れをしてくれた役場の担当者も五木村出身ではないのですが、村内での繋がりをきちんと築いていらっしゃる方で、その方にはじめに地域の方とつないで貰ったことも、非常に大きいと思います。
親身に接していただいて、私もそのように移住して来た方に接すればいいのだという風に思えました。
五木村は、移住して来た方が次に移住して来られる方のサポートをして、村の方もみんなで新しい移住者のサポートをしてくれる。そうやってみんなが繋がりあう温かい村なんです。だから同じようにコミュニケーションを取れる方に五木村に来ていただきたいし、そんな方なら五木村にすんなりと馴染めるんじゃないかと思います。
みんな近所の人のことは他人事ではないんです。常に話もするし、いろいろ情報も共有します。
私自身はそれがすごく居心地がよくて、移住して来られる方にも同じように感じて頂けるようにサポートしたいなと思っています。